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評価制度をつくる前に、まず仕事を言葉にする

「社員を公平に評価したい」
「若手が成長できる仕組みをつくりたい」

このように考え、
評価制度の導入や見直しを検討する企業は少なくありません。

しかし、評価項目や点数の付け方を先に決めても、
制度がうまく機能するとは限りません。

評価制度をつくる前に整理しておきたいのが、
役職や立場ごとに「どのような仕事を担い、どのような行動を期待するのか」という点です。

評価しにくいのは、基準がないからとは限らない

社員を評価しにくい理由として、「評価基準がないこと」が挙げられます。
そこで、責任感、協調性、積極性、リーダーシップなどの項目を設けることがあります。

もちろん、こうした項目も必要です。
ただし、言葉の意味が曖昧なままでは、評価する人によって判断が変わります。

例えば、職長に求める「リーダーシップ」とは、具体的にどのような行動でしょうか。

自分の作業を正確に進めることでしょうか。周囲へ指示を出すことでしょうか。
それとも、工程、安全、品質、原価を確認し、問題が起きる前に対応することでしょうか。

同じ言葉でも、想定する行動は人によって異なります。
そのため、抽象的な言葉だけを評価項目にしても、評価のばらつきはなくなりません。

「若手が育たない」は課題ではなく現状

経営者から、「若手が育たない」「管理職に任せられない」という相談を受けることがあります。

これらは会社で起きている現状です。

その要因としては、本人の経験不足だけでなく、教える内容が上司によって違う、
仕事の進め方が共有されていない、役職ごとの責任範囲が曖昧といったことが考えられます。

したがって、取り組むべき課題は、単に「社員の意識を変えること」ではありません。

役職ごとに求める役割と行動を整理し、
本人と上司が共通の基準で育成や振り返りを行える状態をつくることです。

仕事を分解すると、期待する行動が見えてくる

ある建設関連企業では、職長に求める力量を整理するため、日常業務を具体的に確認しました。

すると、職長の仕事は、
現場で作業ができることだけではないと分かります。

例えば、次のような役割があります。

・作業内容と工程を把握する
・必要な材料や人員を確認する
・品質と安全を管理する
・現場で起きた問題に対応する
・関係者と情報を共有する
・部下や後輩を指導する
・改善点を見つけ、次の現場へ反映する

このように仕事を分けると、
「できる職長」という曖昧な表現を、具体的な行動へ置き換えられます。

また、本人の自己評価と上司の評価を比較すれば、認識の違いも確認できます。

例えば、本人は「工程管理ができている」と考えていても、
上司は「変更が発生した際の報告や調整が不足している」と捉えているかもしれません。

評価の違いを単なる点数差として扱うのではなく、その背景にある認識を話し合うことが育成につながります。

評価表は、点数をつけるためだけのものではない

評価制度を給与や賞与の決定だけに使うと、社員は評価結果を必要以上に気にするようになります。
一方、仕事の習熟度を確認する道具として使えば、次に取り組むことを具体化できます。

例えば、業務の習熟度を次のような段階で整理します。

・教わりながら実施できる
・一人で標準的な作業ができる
・状況に応じて改善できる
・他の社員へ指導できる

このような基準があれば、現在の位置と次に目指す段階が分かります。

さらに、「工程管理を学ぶ」「安全管理を任せる」「後輩への指導を経験する」といった育成計画にもつなげられます。

つまり、評価表は社員を順位づけるためのものではなく、
仕事を任せる基準と成長の道筋を共有するためのものでもあります。

会社の方針と現場の仕事をつなげる

経営計画に「利益率を改善する」「次世代の管理職を育成する」と書かれていても、
それだけでは現場の行動は変わりません。

例えば、利益率を改善するためには、
職長が材料の使用状況や工程の遅れを把握し、早めに対処する必要があります。

また、次世代の管理職を育成するためには、作業技術だけでなく、
判断、報告、調整、指導といった役割を段階的に経験してもらう必要があります。

このように、会社の方針を役職ごとの仕事や行動まで落とし込むことで、経営計画と人材育成がつながります。

最初から完成した制度を目指さない

仕事の内容や役割は、会社の規模、組織体制、事業内容によって異なります。
そのため、他社の評価表をそのまま導入しても、自社の実態に合わないことがあります。

まずは、現在の業務を確認し、役職ごとに担っている仕事を書き出すところから始めます。

そのうえで、

・本人ができていること
・今後できるようになってほしいこと
・上司が確認すべきこと
・会社として共通化したい判断基準

を整理します。

実際に運用すると、判断しにくい項目や現場に合わない表現も見つかります。
それらを修正しながら、自社に合った仕組みへ整えていくことが現実的です。

まとめ

評価制度をつくる目的は、評価表を完成させることではありません。

誰が、何を担い、どのような状態を目指すのかを明確にし、
社員の成長と会社の方針をつなげることが大切です。

評価基準を考える前に、まずは自社の仕事を具体的な言葉にする。
役職名や抽象的な能力ではなく、実際の仕事と行動を整理する。

そこから始めることで、
評価制度は点数をつける仕組みではなく、仕事を任せ、人を育て、経営計画を実行するための仕組みになります。

自社の役割整理や評価基準、人材育成の進め方についてお悩みの際は、お気軽にご相談ください。