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トップ営業が忙しすぎる会社は、なぜ次の成長が止まりやすいのか

「売上の大きい顧客は、経験のある営業に任せたい」
「重要な案件ほど、できる営業が対応したほうが安心できる」

中小企業では、このような考えから、
主力となる営業担当者へ顧客や仕事が集まりやすくなります。

実際、顧客との関係が深く、
状況に応じて柔軟に対応できる営業担当者は、会社にとって大切な存在です。

一方で、その人が既存顧客への対応や日々の調整に追われ、
新しい顧客への営業や後輩の育成に時間を使えなくなると、
会社の次の成長が止まりやすくなります。

今回は、ある企業で進めている営業体制の見直しをもとに、
主力営業の負荷をどのように捉え、
組織として営業余力をつくっていくかを考えます。

売上を支える人ほど、次の売上をつくれなくなる

トップ営業が忙しいことは、一見すると良い状態にも見えます。

多くの顧客から頼られ、さまざまな相談や依頼が集まっているのは、
それだけ信頼されている証しでもあります。

しかし、その忙しさの中身を確認すると、
必ずしも本人にしかできない仕事ばかりとは限りません。

例えば、

・定期的な顧客訪問や連絡
・日常的な問い合わせへの対応
・スタッフや納期などの状況確認
・軽微な条件変更の調整
・顧客情報や進捗状況の管理

といった業務が積み重なり、
本来取り組んでほしい重要顧客との関係強化や、
新規顧客の開拓に手が回らなくなっていることがあります。

既存顧客を守るために日々の対応へ追われ、その結果、
次の売上をつくる活動ができない。

トップ営業への依存が強い会社では、
このような状況が起こりやすくなります。

顧客数だけでは、営業の負荷は分からない

営業担当者の負荷を確認するとき、
「一人あたり何社を担当しているか」だけを見ることがあります。

もちろん、担当社数も大切な指標です。
しかし、顧客によって必要となる対応は大きく異なります。

取引額が大きくても安定しており、日常的な対応が少ない顧客もいます。
一方、取引額はそれほど大きくなくても、細かな調整や相談が多く、
営業担当者の時間を使っている顧客もいます。

そのため、営業負荷を整理する際には、
少なくとも次のような視点を組み合わせて確認する必要があります。

・担当顧客数
・顧客ごとの売上と利益
・顧客対応に必要な頻度や工数
・顧客との関係性や今後の拡大余地
・トラブルや条件交渉の難しさ
・営業担当者にしかできない業務の割合

とある支援先でも、顧客別の売上・利益だけでなく、
担当営業別の顧客構成や対応人数などを整理しました。

その結果、一部の主力営業に大口顧客や対応負荷が集中している一方で、
営業担当者ごとに負荷や余力の差があることが見えてきました。

感覚的に「忙しそう」と捉えるだけでなく、
誰が、どのような顧客を、どの程度担当しているかを可視化することで、
初めて具体的な役割分担を考えられるようになります。

すべての顧客を、同じように扱わない

営業体制を見直すうえでは、顧客を一律に扱わないことも大切です。

支援先では、顧客ごとの売上や利益、対応状況などを踏まえ、
顧客をいくつかのグループに整理しました。

例えば、

・今後も主力営業が関係を深め、取引拡大を目指す顧客
・日常的な運用を別の担当者へ段階的に移せる顧客
・条件や収益性を見直す必要がある顧客
・対応負荷を踏まえ、取引の縮小や整理も検討する顧客

といった分け方です。

ここで重要なのは、
単純に「売上の小さい顧客を手放す」ということではありません。

売上だけでなく、利益、対応負荷、取引の安定性、
今後の成長可能性などを見ながら、
会社としてどこに営業資源を配分するかを考えることが目的です。

売上規模が大きくても利益が十分に残らず、対応工数が多い顧客もあります。
反対に、現在の売上はそれほど大きくなくても、
今後の拡大余地があり、関係を深める価値が高い顧客もいます。

「売上が大きいから重要」「長く担当しているから変更できない」と決めつけず、
複数の視点から顧客構成を見直す必要があります。

「顧客を持つ人」と「日常業務を回す人」を分ける

顧客移管と聞くと、これまでの担当者から別の担当者へ、
顧客を丸ごと渡すことを想像するかもしれません。

しかし、すべての役割を一度に移す必要はありません。

今回の支援では、主営業と管理営業という二つの役割を整理しました。

主営業は、
新規営業、重要な条件交渉、重大なトラブルへの対応、
重要顧客との関係構築など、判断や責任を伴う業務を担います。

管理営業は、
決められたルールのもとで、定期的な顧客対応や状況確認、
情報管理など、日常業務を安定して回します。

つまり、

顧客に対する責任や重要な判断は主営業が持ち、日常的な運用は管理営業が担う

という分け方です。

このように考えると、「大切な顧客だから他の人には任せられない」という不安を抑えながら、
主力営業の負担を減らすことができます。

顧客移管は、単なる担当変更ではない

顧客移管の目的は、担当者の名前を変更することではありません。

移管によって生まれた時間を、
会社の成長につながる活動へ再配分することが本来の目的です。

例えば、

・新規顧客への営業活動
・既存顧客からの追加受注
・重要顧客との関係強化
・後輩営業の指導や育成
・新しい地域や市場の開拓
・営業戦略や顧客構成の見直し

などです。

移管した後に主力営業が別の日常業務を抱えてしまえば、
会社としての営業余力は増えません。

「何を移すか」だけでなく、
「空いた時間を何に使うか」まで決めておくことが重要です。

一度に変えず、段階的に進める

長く担当してきた顧客を別の担当者へ移す際には、
社内から不安や抵抗が出ることもあります。

顧客との関係が悪くならないか。
新しい担当者で対応できるのか。
トラブルが起きたとき、誰が責任を持つのか。

こうした不安を残したまま、組織図や担当表だけを変更しても、
実際の運用は元に戻りやすくなります。

そのため、最初から完全に任せるのではなく、

  1. 日常的な連絡や確認から共同で対応する
  2. 判断基準や報告ルールを共有する
  3. 定型的な業務を少しずつ移す
  4. 例外的な対応は主営業へ相談する
  5. 運用状況を確認しながら担当範囲を広げる

というように、段階的に進めることが現実的です。

顧客移管と同時に、
顧客情報、過去の経緯、注意点、
判断基準などを共有できる状態にしておくことも欠かせません。

まとめ

トップ営業に仕事が集まるのは、その人に能力と信頼があるからです。

その状態自体を否定する必要はありません。

しかし、既存顧客への日常対応まで一人に集中し、
新規営業や人材育成に時間を使えなくなっているのであれば、
会社の成長を支えてきた強みが、
次の成長を妨げる要因へ変わる可能性があります。

まずは、営業担当者ごとの顧客数だけでなく、
売上、利益、対応負荷、今後の拡大余地を整理する。

そのうえで、主力営業が持つべき顧客や仕事と、
他の担当者へ移せる日常業務を分けていく。

そして、移管によって生まれた時間を、
新規営業や追加受注、人材育成などへ振り向ける。

この一連の取り組みが、
個人の頑張りに依存した営業から、
組織として継続的に売上をつくれる営業体制への第一歩になります。

もし現在、

「売上が特定の営業担当者に偏っている」
「できる営業ほど、既存顧客への対応に追われている」
「新人を採用しても、任せられる仕事や顧客がない」

と感じているのであれば、
営業担当者個人の努力を求める前に、
顧客構成と役割分担を一度整理してみてはいかがでしょうか。

顧客分析や営業負荷の整理、営業体制の見直しについて、
何から手をつけるべきか整理したい際には、お気軽にご相談ください。